pta廃止をした学校とその廃止するまで行った事例

pta廃止

スポンサードリンク

会長

幼稚園や小学校、中学校の新年度を迎えるとき、子供達は少なからず緊張するものです。「クラス替えでどんな人とクラスメートになるのか」「担任の先生は変わるのか」など、色々と思いを巡らすことでしょう。

 

しかし保護者もやはり同様に緊張することになります。それはPTA活動の役員決めが行われるためです。新年度になると役員が新たに決め直され、学校によってはジャンケンやくじ引きといった運任せの方法で役員決めが行われることもあります。

 

何の役職に当たらなければよいですが、大きな役員に当たると、その年度の仕事・プライベートのスケジュールは大幅に変更せざるを得なくなります

 

そんな中、「保護者に負担の大きなPTAは廃止すべきだ」という声が近年高まりつつあります。ネット上でもその意見は強く、特に実際にPTA役員を経験した人で多くのストレスを抱えた人は、自らのブログや掲示板で「PTAがいかに酷い組織だったか」を語っています。仕事の忙しさ、人間関係の大変さなど、役員が抱える心労は大きくなりますからね・・・

 

そこで以下では、実際にPTA廃止をした学校の事例を取り上げて、どういうプロセスを経て廃止に至ったのか、廃止に至る条件とは何か、についてまとめてみました。もし本格的にPTA廃止の運動を始めようという人は、ぜひ参考にしてください。

////////////////////////////////// //////////////////////////////////

PTA廃止論の高まり

PTAを廃止すべきとの声が高まるには、相応の理由があります。なぜPTAは廃止されるべきと考えられるのか、その意見をまず見てみましょう。

 

・半ば強制加入のシステムに対する批判

昨年、タレントで大学の客員教授も務めている菊池桃子さんが、政府主催の「1億総活躍国民会議」で、PTAは任意参加の組織であるはずなのに、全員参加の雰囲気があるという趣旨の発言をし、大きな話題を呼びました。

 

実際のところ、PTAは各学校が組織する任意団体で、文科省が指導してはいるものの、「保護者は必ず参加しなければならない」といったことを定めた法律があるわけではありません。ですので、参加する、しないは各人の自由であるというのが基本です。

 

しかし、特に日本のような組織を大事にするお国柄では「不文律」が重視されます。「PTAに入って当たり前、入らない人は、普通の感覚の持ち主ではない」という考え方、価値観が根強くあり、気軽に参加、不参加を決められる状況ではありません。PTAの会則においても、生徒の保護者には必ず参加してもらうといったことをいちいち条文に書いてあることはまずないのですが、「参加しない=悪」という見方は強いですね。

 

ただこの見方にも多少の理屈があります。保護者から毎年あるいは毎月、一定額のPTA会費が徴収されますが、その集めたお金で学校の行事の支援、備品の支援が相当程度行われているのです。例えば運動会の徒競走で一等を取った人が貰うトロフィーや粗品、卒業式で卒業証書と一緒に貰う証書を入れる筒、などがPTAの予算で賄われることも多いです。そうなると、もしPTAに入っていない人がいたら、「PTA会費を払っている人が、払っていない人の子のトロフィーや証書入れの筒の代金を払っている」ということになってきます。

 

こうした例を前にしたとき、「だから全員PTAに入らないとダメ」と見るか、「参加・不参加の選択肢を無くす、PTAという組織の悪しき特徴」と見るかは、人それぞれでしょう。PTA廃止を主張する人は、後者の立場を取ります。

 

・役員の負担の大きさ

PTAには、会長、副会長、書記、会計、といった会の中心となる役員と、学年委員、広報委員、地区委員といった委員会役員といった役職が定められています。もしこれらの役職に選ばれると、平日の早朝や夜、土日の休日などを返上して役員の仕事に従事する必要が出てきます。普段仕事をしている保護者にとっては、非常に大きな負担になるわけです。

 

毎年度の始め、もしくは前年度末に行われる役員決めの会議は、役員をやりたくない保護者が集まって無理やり役員を決めようとするわけですから、紛糾することもしばしば。「役員決めの日に休んでいる保護者が多いが、休んだら選ばれないで済むのか!」とか「下の子がまだ未就学児なのに、役員の仕事なんてできるわけない!」といった様々な意見が飛び出し、大声を出して怒り出す保護者が現れることもあります。

 

役員に選ばれたら選ばれたで、他の役員との人間関係のトラブルに直面することもあります。先輩ママさんが後輩のママさんに、役員の作業のことで厳しくダメ出しをしたり、会議に欠席・遅刻をした人に示し合わせて冷たくするなど、子供のやるイジメまがいのことも行われています。

 

保護者に大きな負担を負わせ、保護者の間に不協和音を生み出す元凶ともなるPTAに対して、「無くすべきだ」という声が上がるのは、無理もないこととも言えますね。実際にPTA役員を経験して辛い目にあった人は、「PTA廃止すべき」との声に強く賛同するだろうと思います。

 

実際にPTA廃止に至った東京都杉並区和田中学校の事例

PTA廃止の声は高まりつつあるものの、実際に廃止にまで至った事例というのはほとんどありません。やはりPTAも歴史と伝統のある組織ですから、簡単には廃止できません。また保護者の中でも「やはりPTAは大事なのでは・・・」という声は根強いですからね。

 

しかし実際にPTAを廃止した学校があります。正確にはPTAから「役員」などの役職を取っ払って、学校が独自に作った組織の下位に位置づけられるという形になったのですが、その取り組みを行った東京都杉並区にある和田中学校の事例を紹介しましょう。キーワードは、「藤原和博校長」と「地域本部」の二つです。

 

・民間出身の校長が学校経営の改革に挑む

和田中学校がPTAを廃止したのは2008年のこと。廃止に向けて牽引したのは、保護者ではなく当時の同中学の校長だった藤原和博氏。いわば学校側の代表格である「校長先生」が、PTAを廃止すべく先導したわけです。この藤原校長は2003年4月に和田中学の校長に就任したのですが、元々先生だったわけではなく、なんと民間企業のリクルート社の社員でした。21世紀に入ってから、民間企業での経験を活かして学校運営をしてもらおうと、民間出身の校長先生を据えるという動きが活発化し、藤原氏もその一環として教育界に入ったわけです。

 

校長に就任するや否や、様々な改革を断行。有名なのが、学習塾と提携を結んで有料で補習授業を行った「夜スペ」、世の中で生きていく上で役立つ知恵、生涯使えることを教えることを目的とした「よのなか科」という科目の設置などですね。前衛的な取り組みの数々は、マスコミでも大きく取り上げられました。

 

同中学の校長は2008年3月まで務めたようですが、その最後の仕上げとして行ったのが2008年度からPTAを同中学が設置した地域本部の一部門にする」というものです。
「PTA」会長を廃止し、PTAの全国組織である「日本PTA全国協議会」から脱退すると宣言したもので、事実上のPTA廃止を決めたわけです。

 

・和田中学が設置した「地域本部」という組織

「地域本部」は、学校の教育活動を支援するために設置された機関で、組織形態としては地域本部本部長を頂点に、副本部長がいて、会計、庶務、広報、保護者会といったその指揮下に入る各部門が設置されている形になっています。「夜スペ実行委員会」「学力支援委員会」など役職・部門が設置され、一見するとPTAの組織に似た部分がたくさんあります。

 

しかしPTAと根本的に異なるのは、地域本部を支える「人」です。PTAは保護者と教職員が役員やら委員会やらを担当するのですが、地域本部はその名の通り、地域住民や元PTAメンバーを中心として登録された40名ほどの「学校支援ボランティア」が日々活動しています。つまり、「保護者だけが強制的に駆り出される」というPTAならではの図式が取り払われているわけです。

 

これは保護者にとっては助かると思いますね。地域本部制が取られているおかげで、「役員決め」などの重苦しい会議の場に保護者が強制的に呼ばれるようなこともないのです。でも考えてみれば、これは理にかなっています。子供の学校教育活動をサポートするのは、その保護者である必要はありません。それどころか、「定年前は先生をしていた高齢者の方」や「ボランティア活動に熱心な意欲のある大学生」といった人たちは、一介のサラリーマンや主婦である保護者よりも、よっぽど経験と能力、そして時間があると言えるでしょう。その社会資源を使った方がはるかに合理的です。

 

地域本部制の導入によってPTAを解体し、より地域に開かれた学校を作っていく……これが和田中学校による「PTA廃止」です。

 

////////////////////////////////// //////////////////////////////////

和田中学の事例から言えること

和田中学校の取り組みが成功した背景にあることを、3つのポイントにまとめてみましょう。

 

①PTA廃止を目指すキーパーソンの存在

やはりPTAの廃止を目指すには、「廃止を目指す」という意欲を持った人が学校やPTAの中心的な地位に就き、廃止運動を牽引するということが一つポイントになります。和田中学校の場合は校長の藤原和博氏でした。藤原氏も、PTAを解体するまでの道のりは平坦なものではなく、当時の学校単体PTA側との対立も少なからずあったようですね。しかしそこは藤原氏の持つ強烈な指導力、実行力で壁を乗り越え、地域本部を主体とする組織形態を作り上げたわけです。和田中学の場合は「校長先生」でしたが、例えばPTA廃止を掲げてPTA側の重鎮(会長や副会長)になり、廃止運動を展開するということもできるかもしれませんね。

 

②PTAに代わる組織の設置

PTAは確かに「強制加入」、「役員決め」など保護者にとって負担が大きいものですが、子供の学校生活をサポートすること、「学校、保護者、地域を結ぶ」というその本来の目的自体は間違ってはいないはずです。問題があるとしたら、その目的ではなく、目的に至るための手段・システムの方でしょう。ですので、和田中における地域本部の取り組みのように、PTAよりも合理的な手段・システムを持つ「学校生活を支える組織」を立ち上げることが一つポイントになると言えそうです。

 

③学校側、保護者側の理解

PTA廃止を主張する人がいると同様、PTAの役割を重視し、その維持を主張する人もいます。和田中学の場合も、藤原校長の考え方、地域本部のシステムに賛同する保護者、教員がいたから、PTA廃止を成し遂げることができたわけです。全員が反対するような状況だと、いくら両案でも実行することはできません。学校関係者、保護者にPTA廃止の必要性がどのくらい実感としてもたれているのか、支持してもらえるのかといったことも、大きなポイントになりますね。

 

PTAを廃止の声が高まってきているからこそ改革をすべし?

 

PTAを全廃するというような動きは今のところ見られませんし、PTAの存在意義を主張する人がまだまだ多いのも事実です。

 

しかし「保護者にばかり過度な負担がかかる」という従来のPTAのあり方を乗り越えた藤原和博校長の取り組みは、全国の保護者に共感を持って迎えられるのではないでしょうか。実際、和田中学の取り組みは一つのモデルになり、文科省もそのあり方に注目。今や全国の小中学校で参考にされるようになっています。

 

PTAを廃止すべきか、それとも存続させるべきなのか……今後も議論が続きそうですね。

関連記事

【絶対に読ませたい】東大出身の親御さんが子供たちに読ませるおすすめ本5選!

子供のころに本を読むかどうかで将来の考えの豊かさや地頭力が変わってくるといわれてます。その中でも東大出身の親御さんが子供たちによく読ませる本をピックアップしてきました。絶対に読ませたい珠玉の本です。